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昼休み
「毎日毎日、よくやるわね」
お昼休みの時間。
窓際の私の机の前でいちごオレを飲む幼馴染に、私はむっと唇を尖らせた。
「ひどい、ゆうちゃん。そんな言い方ないじゃん」
ゆうちゃんは呆れた目で私を見ながらパックをずずっと吸って凹ました。普通なら人目を少し憚るであろうその行いを堂々とするのがゆうちゃんだ。相変わらず男勝りでかっこいい。その性格を表すようなショートカットに切られたゆうちゃんの黒髪が、頬杖をついた時にさらりと流れた。
「だってあんた、朝いつも何時に起きてんのよ」
「五時」
「うへー。あたし絶対無理だわ」
ゆうちゃんは苦い顔をしながら飲み切ったいちごオレのパックを教室のゴミ箱に放り投げる。パックはゴミ箱に吸い込まれるように入った。ナイスシュー。
「慣れちゃえば大したことないよ」
「祠に毎日祈るって、灰音のロマンチストは変らないね。あんたの願いは自分の力で叶いそうなもんなのに」
子どもを見るような、ゆうちゃんの温かい視線を受けながら、私は最後のお弁当の卵焼きを口に頬張り、弁当箱を閉じて手を合わせた。祈るようなポーズに、今朝の祈りを彷彿させる。
そう。すべては夢のため。
『誰かの一番に、特別になりたい』
これが、私がずっと祠に祈ってる願いだ。
この願いを知っているのはゆうちゃんと、今朝祠で会った叶夜さんだけだ。
叶夜さんが私の願いを知ったのは、あの日。
初めて叶夜さんに会ったあの日。
彼氏にフラれたあの雨の日だ。
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