初恋

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 その後も何度か彼の試合に訪れ、大きな声で応援した。見つけてほしくて、私にだけあの笑顔を向けてほしくて。そしたら木原君も私に気づいて、教室でもよく話すようになった。彼への好意を自覚したのは、その頃からだった。  仲良くなって、私の方から告白をした。  彼も私が気になっていたと言ってくれて、付き合うようになった。  好きな人と想いが通じ合うことが、こんなにも幸せで夢見心地になるなんて、この時初めて知った。  付き合ってからもインターハイ優勝を目指す彼を応援したくて、バレーのルールを勉強して、たくさん声を上げて応援をした。彼のアタッカーとしての実力は確かで彼を中心にどんどん成果を上げて、試合で勝利していった。私もそんな彼が誇らしかった。  けれど私たちが二年生に上がって彼が正式にエースになった時、負けることが続いていった。  初めて試合で負けて泣いている彼に、そういう時もあるよ、次は勝てるよと慰めてみたけれど、私の紙のように軽い言葉なんか彼の心に届くはずもなく。木原君はさらに部活を頑張るようになった。私もそんな彼を応援したくて、お弁当や差し入れをたくさん作って、勝てるようにお守りもたくさん作った。  その頃からだった。だんだんと木原君から距離を置かれるようになったのは。  試合の日程も事前に教えてくれたのに、全然連絡してこなくなった。さらには部活にも顔を出さなくていいとまで言われてしまった。部活に集中したいのだろうと思って、私は彼の言うことをきいた。寂しいと思う気持ちはあるけれど、練習頑張って、また勝った時の笑顔が見たいと思っていたから、彼のためならと我慢した。
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