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そんな時、ゆうちゃんから次の休日に体育館で試合があることを聞いた。悪いと思ったけど、久し振りに木原君のバレーを見たかった私はこっそり彼の試合を観に行った。
その日の試合は、木原君たちが負けた。
落ち込んでる彼らを見て、私も何だか泣きそうになった。
バレたら怒られるかもしれないと思いながらも、一言彼に言葉を伝えたくて、隠れて校門の前で待っていた。しばらく待っていたが、相手校のチームや他の部活のメンバーが校門を通るばかりで、木原君の姿は見えない。練習をしているのかと私は体育館に戻った。まだ明かりはついていてやはり残っているのだと体育館を覗いた時、息が止まった。
木原君が、マネージャーの女の子と笑いあっていた。
普通に話してるだけなら、よかったのに。笑っているマネージャーの目に木原君への好意が見えて。それは彼の目にも反射しているように見えた。
私は思わず二人に駆け寄って、マネージャーの女の子を突き飛ばしていた。その子はよろけるだけで倒れはしなかったけど、突然現れて突き飛ばしてきた私に驚いているようだった。
「お前、何してんだよ!」
木原君が私を諫める声を上げる。私は木原君に手首を掴まれ、そのまま体育館の外に連れ出された。しばらく引っ張られ中庭まで来た時、私は彼の手を振り解いた。
「何笑ってるの? 試合に負けて悔しくないの? 部活頑張ってるって思ったから、寂しいの我慢してたのに。あの子と仲良くしてもらうために、私は我慢してたんじゃない!」
「別にあいつとはそんなんじゃないって!」
「だったらなんで二人っきりで笑って話してたの!? 最近私には素っ気なかったくせに! もうあの子と話さないでよ!」
自分がいるはずだった場所に別の女性がいたことが許せなかった。自分が共有するはずだった彼との時間が奪われたことが許せなかった。ずっと溜まっていた醜い感情が溢れ出して、止まらなかった。
激しい言い合いが続いた。黄金色に染まった空が大きな灰色の雲に覆われて、ぽつぽつと雨が降り始めた。雨粒が私の涙に混ざる。もう何に泣いているのか、それすらもわからなくて感情のままを彼にぶつけた。だからだろう。言い合いが私の一方的なものに変わっていたことにも、彼が疲れたように溜息をついていたことにも気づかなかったのは。
「お前の気持ち、重いんだよ」
聞こえたのは、私を突き放す怒り交じりの彼の言葉。
見たことない彼の冷たい相貌、呆れた眼差し。
そして、凍り付いた私の心臓。
その時、やっともう後戻りできないことに気づいて。
彼が私と別れたがってることを悟った。
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