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第5話 雑草の中になにかが!?
秋の始め、田んぼの中のあぜ道を小学校に上がったばかりの男の子が二人、体育の白いショートパンツを履いて歩いてくる。
「孝ちゃん、ほんとけ?」
メガネを掛けた背の低い男の子が、目をクリクリさせながら、横を歩いている少し背の高い男の子に話しかけた。
「ああ、本当だって。婆ちゃん、ゆうとったもん。あずきを入れんだってよ、中にさ」
「あずき入れんのか、中に。いっぱいか?」
「うんだぁ、憲やんのとこ、婆ちゃんいねぇのけ」
「いねぇ」メガネの子が唇を突き出した。
孝ちゃんと呼ばれている男の子が、ニコニコしながら誇らしげに続けた。
「うちの婆ちゃんも、昔、良くやったってゆっとったぞ。婆ちゃんの若いときは、五個一緒に出来たゆうて、えばっとった」
「五個?……運動会ですんのけ」
「わからん」
背の高い男の子が、道に落ちていた小枝を拾いながら、首を振った。
メガネの子が、少し前で後ろ向きにゆっくりと歩きながら、
「でも、孝ちゃん。なんで先生、運動会の練習やるゆうて、みんなに赤と白の玉見せて、二個ずつ作ってこい、ゆうたんかのぉ」と、首を捻る。
小枝を軽く振りながら、首を前に突き出すと目を丸くして言った。
「なんや、憲やんは知らんのけ。座って、赤と白の玉を、両手で交互に上に投げて、受け取るんや。長く続けた方が勝ち、ゆうとったな婆ちゃん。こんだ見せてくれるゆうとったから、うち来るけ」
「なんで、運動会でそんなんやるんや。学校って、けったいな所やな~」
メガネの子が前に向き直ると、小学校の名前の入ったシャツの前で腕組みをして、歩きながら続けた。
「それ、楽しいんか」
「わからん」
「けど、先生。玉見せてくれたんはええけど、中身ゆうてくれんかったから、昨日は母やんと遅くまで色々考えとって、今日は眠いわ。ほんと孝ちゃんは、婆ちゃんがいてええなぁ」
憲竹は、後ろ歩いていたはずの孝明の返事が無いので、振り返った。
左手に、神社の竹林に続く、雑草が伸び放題の空き地がある。
孝明は立ち止まって、その空き地の方へ目をやっていた。よく見ると、握っている小枝の先が小刻みに震えている。
「孝ちゃん、どうしたん?なにかあったとぉ」
憲竹の間延びした声が聞こえる。
しかし孝明は、そんな声が聞こえていないのか、無言でその場にしゃがみ込むと、小枝をおいて、足下に転がっている大きな石を両手で持ち上げようとしていた。
憲竹は走ってくると、しゃがんでいる孝明の後ろから、首をヒョイと草むらの中をのぞき込んだ。
「うっ!」
憲武は、立ったまま口を押さえた。
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