俺たちが走る理由

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 思いがけない雄叫びを聞き、大いに戸惑った。  俺は単に走っているのではなく、前の連中を追いかけているようである。  なぜ?  思い当たることは何一つない。  しかも奇妙なのが、俺に追いかける理由がないばかりか、前の奴は「どうして追いかけて来るんですか!」と叫んでいることである。  つまり向こうも、なぜ俺に追われているのかがわからないらしい。  追いかける側と追いかけられている側が、共に理由がわからない──  そんな奇妙奇天烈なことがあるのだろうか?  ここで俺はあることを思いつく。  追いかけるのをやめてみたらどうなるのだろうか、ということだ。  我ながら名案ではないか。  そもそも理由もなく誰かを追いかけるなんて、愚の骨頂もいいところだ。こんな馬鹿馬鹿しいことは、さっさとやめてしまう限る。  と、いうわけで俺は、ゆっくりとスピードを落としていくことにした。当然のことながら、前を行く連中との距離が開いていく。 「ムグググッ!」  これは一体どういうわけだ⁉︎  急に息苦しさを覚えたのである。目の前の視界が歪む。全身が痺れ、胸が締め付けられるのだ。  イカン! このままでは気を失ってしまう。  命の危険を感じた俺は、慌ててスピードを上げた。  するとどういうわけか、全身が軽くなり、体が楽になったのである。
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