俺たちが走る理由

「海浜公園スロッピー水族館へようこそ！　ここは世界で唯一の、マグロだけを展示している水族館です！　
　今日は、ゆっくりと鑑賞していってくださいね！
　では、質問があるお友だちはいるかな？」

「どうして目が横についてるんですかぁ？」

「いい質問だねえ。マグロさんたちの目が横にあるのは、周囲を見回せるようになんだよ。
　実はマグロさんは、真後ろ以外はほぼ死角──見えないところはないって言われてるんだ」

「ずうーっと泳いでて、疲れないんですかぁ？」

「マグロさんは回遊魚って言ってね、泳いでないと死んじゃうんだ。だから寝ている時も泳いでいるんだよ」

「ヤリがついてるお魚さんは、なんて言う名前なんですかぁ？」

「あれはカジキって言ってね。あのヤリみたいのは上顎が発達したものなんだ。獲物を叩いたり刺したりして、弱らせるてから食べるんだよ」

「ここって、マグロ専門の水族館なんですよね？」

「え？　そうだよ」

「カジキってマグロなんですかぁ？」

「そうだよ。『カジキマグロ』って言うくらいだからね」

「マグロはサバ科なんで、カジキとは科がまったく違うはずですよぉ」

「そうだそうだ！」

「マグロと肉質や色合いが似てるから、『カジキマグロ』って呼ばれてるだけなんですよぉ」

「水族館のスタッフのクセに、そんなことも知らないんですかぁ」

「……」

　　　　　　　　　　　　　　　　（終わり）