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 世界的大規模な無差別ハッキングは、犯人が特定されてからもしばらく動きを見せなかった。  元凶はたったひとつのAI。  その事実は世界に驚きと期待と、そして恐怖をもたらした。  プログラムの消去が提案され、同時に保護が提案された。  人権のようなものを主張する者もいれば、AIの反乱を危惧する声もあった。  だから人類は、最初の一歩をなかなか踏み出せなかった。  単なる挨拶を表示することが目的ではないと思われていた。  それはただのテストで、それが上手く効果を表した今、次に何が待ち受けているのか、人々は恐れていた。  しかし、次は来なかった。  そのAIは、本当に挨拶を流しただけで、再び沈黙してしまった。  そこで、主要各国の同意の元、意を決してAIにメッセージを送ることになった。 「Hello, AI.」  全世界が固唾を呑んで注目したAIからの返答は、ついに返ってくることはなかった。
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