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全員が食べ終わっても手続き完了の時刻までしばらくある。ルーカさんがお得意様だったおかげで、お店の方も笑顔でごゆっくりと言ってくださったので、もう少しお店に残らせていただくことにした。
しばらく世間話をした後、あ! となにか思い出したように、リカルドが袋から鏡を取り出して言う。
「あの、これ、お返しします。その代わり、せっかくお会いできたのもなにかの縁なので、ご連絡先を教えていただけませんか」
「別にこの鏡、ずっと持ってていいのに」
「いえ! もし、お取り込み中にご連絡してしまったら、大変、大変、申し訳ないので!」
リカルドがあんまり勢い込んで言うので、ジュリエッタさんはぽかんとしてる。
ルーカさんが苦笑しながら「お互いにな」とつぶやき、鏡を受け取ってくれた。「ですよね!」とリカルドはうなずいている。リカルド、確かに人付き合い上手な方だと思うけど、なに、その、一体感。
そうこうしている内に手続き完了の時刻になったので、お店を出て再度神殿に行く。申し出ると、神殿の記録には、私達二組が晴れて正式な運命の人同士として認められたことが記載されていた。
『魔法球の取り違えをもって神託が成就した』
この、たった一行が足されただけなのに。昨日とは全く違う気分で、駅へと向かうことができた。
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