それから

3/3
前へ
/271ページ
次へ
 少し息をつき、私の方を見てにこにこ笑いながら、リカルドはこう続けた。 「ドアが開いた瞬間、この子なんだ! って、すごく嬉しかった」  リカルドのあまりにも真っ直ぐな気持ちに、よくわからないけど、なんだか少し、身の置き場のなさを感じてしまう。 「そんな……素敵な女の人じゃないよ、私」 「ええ? 俺、ほんと、ジュリエッタが相手でよかったよ!」  ただ、と、リカルドがつぶやくように言う。 「父ちゃんにも、会わせてやりたかったな、ジュリエッタのこと」 「お父様?」 「三年前に亡くなったんだ。お前の相手、早く見たいなあって言ってたよ、ずっと」 「……絶対、一緒にお墓参り、行こう」 「うん。ありがとう! 父ちゃんも母ちゃんも喜ぶよ!」  リカルドはにこにこしているのに、なんだか妙にさびしげに見えて、思わず抱きしめてしまう。そのまま頭をなでると、リカルドは黙って、ずっとされるがままになっていた。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

201人が本棚に入れています
本棚に追加