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受け取った袋を作業部屋でじっくり眺める。なるべく現状維持ってことは、隅の穴はボタンホールみたいにかがろうかな。裏地もすり切れてるけど、繕えばいいかな。
最初はそう思っていたのだけど、内ポケットの裏地になにかあるのに気づいて確認した時、もっと抜本的な処理をすることに決めた。リカルドはこの袋を一生使い続けるんだと思ったから。
「リカルド。袋、修理できたよ」
「もう? 早いね。ありがとう!」
「早く使いたいだろうと思ったから」
そう言って袋を両手で差し出すと、リカルドは丁寧に受け取り、じっくり眺めていた。
「すごい……。穴、全然わからないように処理してくれてるし、裏地つけ替えてくれてて、持ち手も革でしっかり補強されてる。ジュリエッタ、ほんとにありがとう……」
「最初は、穴、糸でかがるだけにしようかと思ってたんだけど、見ているうちに、リカルド、これ、一生使うんだろうから、申し訳ないけど端を少しバラして縫い直した方がいいなって思い直して。だから、少しだけサイズが小さくなったけど、穴はなくせたの」
「……一生使うって、なんで」
「この袋、替えがきかないんでしょう? 最初は、大事にしてるんだな、としか思ってなかったんだけど、確認してるうちに、買ってどうこうできるものじゃないんだって気づいたの」
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