修理

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 リカルドはしばらく黙っていたけれど、やがてつぶやくように言った。 「これ、母ちゃんが作ってくれた袋なんだ」 「やっぱり、そうだったんだ」 「ああ。ジュリエッタみたいなプロが見れば、素人が縫ったって、わかるよね」 「ううん。すごく丁寧に縫ってあって、下手に市販されてるやつより綺麗なつくりだったよ。そうじゃなくて、内ポケットにね、お守りが縫いつけられてたの」 「お守り?」 「『リカルドが健康にすくすく成長しますように。大切な人といつまでも幸せに暮らせますように』って、丁寧に刺繍された、手作りのお守りが、内ポケットの裏地に。だから、内ポケットだけは、裏地、元のままなの。それ以外は丈夫なヤツに変えたけど」 「……内ポケット使わないから、気づかなかった」  そう言うと、リカルドは袋を開き、じっと内ポケットを見つめた。 「他にも、生地の裁ち方とか、端の始末の丁寧さとか、長く使えるように子供っぽいデザインじゃなくてシンプルで丈夫なつくりにしてたりとか、お母様の愛情をすごく感じたよ。リカルドが買い直したくなかったの、よくわかった。やっぱり、その人のために作られたものに、量販品はかなわないよね。ただ、長持ちさせるために結構な改造しちゃったから、お母様の作った部分が減っちゃって……そこは申し訳ないと思ってるの」
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