運命の人

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運命の人

 もう、来る、はずよね。  この国では、十八歳までに自力で恋人を見つけられなかった場合、神殿に登録すれば相手を神託で決めてもらうことができる。要は公的なお見合いなんだけど、神殿が絡むから、ちょっとロマンティックに「運命の人」なんて呼ばれることもある。私みたいに、異性と出会うきっかけも、自分からきっかけを作る勇気もない人間には、なんともありがたい制度。  その相手が、今日、来ることになっていた。私はうまいことマッチングしたらしく、さほど待たされなかったけど、人によっては登録してから何年か相手が見つからないこともあるらしい。ラッキー、だったのかな。  相手の方に私の情報が込められた魔法球を渡されたため、私は相手がどんな人なのか、全く知らない。来るのを待つだけ。  どんな人かわかんないけど、もの静かで大人な感じの人がいいかなあ。あんまりにも元気なタイプだと、なに話していいかわかんないし。  神殿からは今日の午後に来るって知らせだったけど、もう日が暮れかけている。  私は家が仕事場だから、まあいいんだけど。手持ちぶさただったから、とりあえずお客様から依頼された服を縫い進めてるけど、もうできあがっちゃいそうな感じ。一体どうしたんだろ?
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