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「龍之介さまああぁぁぁッ! ハンカチをお忘れですうううぅぅぅッッッ!」
学校に向かう途中、メイドの神林さんがものすごい形相で追いかけてきた。
それはもう、鬼のような。
殺気のこもった眼差しで。
「ひい!」
僕は思わず直立不動で神林さんを待った。
下手に逃げたらスライディングタックルで動きを止められてしまう。っていうか、普通に死ぬ。
神林さんは息を切らしながら僕の元へとやってきた。
「ゼハー、ゼハー……」
「だ、大丈夫ですか?」
「ゼハー、ゼハー……」
「だ、大丈夫?」
「ゼハー、ゼハー……」
「ほ、ほんとに大丈……」
ぶ? という言葉と同時に塀に身体を押し付けられた。
「ぐえっ!」
「龍之介さま!」
「は、はい?」
「ハンカチをお忘れでございます!」
スッと差し出されたのは花柄の可愛らしいハンカチーフ。
神林さんのっぽい気がしたけど黙っておいた。
「あ、ありがと」
神林さんの手からハンカチーフを受け取ろうとしたら、彼女はそのまま思いっきり腕をスライドさせて首を絞めてきた。
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