階段下のてるてる坊主

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 ふーっ。  みんなにバレないように私は小さなため息をついた。  10日後に迫る体育祭。  そんなもの、雨で中止になっちゃえば良いのに……。  そんな私の気持ちなんかは気に留める様子もなく、夏美(なつみ)ちゃんは明るい笑顔をみせる。 「当日、晴れると良いねー」 「そうだねー」  私は適当に相槌を打った。  高校生になって約2ヶ月。  私はまだ自分の立ち位置を見極められないでいる。 「じゃー、練習はこれで終了!」  竹田(たけだ)君がパンと手を叩く音が心地良く辺りに響いた。  生徒達はワラワラと辺りに散っていく。 「ねー、残れる人だけでもうちょっと練習しない?」  余計なことを言い出した誰かの言葉に、聞こえないふりをして、私は昇降口へと急いだ。
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