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階段に腰かけると、私は両方の手のひらを自分の膝の上に広げてみせた。
女子にしてはちょっと大きめで、関節が太くて本当は気に入らないけれど、間違いなく自分の手だ。
手のひらはほんのりと赤みがかっていて、皮膚の下には赤い血液がちゃんと流れていることがわかる。
今のところ、私はクラスメイト達と上手くやっているんじゃないかと思う。
でも、彼女達との間には半透明の膜が張られていて、どんなに近づいたって私は彼女達に触れることはできない。私のこの手のひらの温度は彼女達には伝わらないし、彼女達の熱気は直に感じることはできないのだ。
でも、おかしいのは多分私の方なんだろう。彼女達は膜なんか最初からないように、無邪気に振る舞っている。
視線を上げると、何だか白っぽい空が階段の隙間から覗いている。
階段の形にカクカクと切り取られたようなその空は、白っぽい水色なのか、それとも全体を薄い雲が覆っているのか、ここからだと良くわからない。
けれど、雨が降りそうもないのは確かだった。
あー、ヤバいなぁ。
こんな所で一人黄昏てるなんて、社会不適合者確定じゃん。
特別教室棟の非常階段。
放課後は人けもなく、校舎の一番奥にあるから、周りからも見えにくい。社会不適合者にうってつけの場所なのだ。
でも、居残りしていた自主練組もそろそろ帰り始める頃だろう。
鉢合わせないように、と私が立ち上がりかけたその時だった。
ザッザッと、本校舎の方から誰かが歩いてくる音が聞こえてきた。
私は再び階段の隅に隠れるように身を縮こまらせた。
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