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足音は非常階段に近づいて来るようだ。
どうしよう……。
ちょうど階段から下りてきた、という振りでもした方が良いかな……。
そう思っていると、その人は階段を上ってくるのではなく、階段の真下に回ったようで、何やらゴソゴソとやり始めた。
そして暫くすると足音は、何事もなかったかのように本校舎の方へと戻っていってしまった。
階段の隙間からそっと覗いてみると、本校舎の角へ消えていくその後ろ姿には見覚えがあった。
竹田君……。階段下なんかで何をしていたんだろう……。
周りに誰もいないか確認してから、階段下に回ってみると、飛び出したボルトの部分に何か白い物がぶら下げられているのが目に入ってきた。
近づいてみると、それはティッシュで作られていることがわかる。
これは……。
てるてる坊主?
ティッシュにペンで書かれた顔は滲んでしまっていて、泣いているようにも見える。
私は思わずふふっと笑う。
首のところに巻かれたゴムに紐が括り付けられているので、詰められたティッシュの重みで頭が下がってきてしまっている。
このままでは逆さてるてる坊主になってしまう。
雨が降っちゃうよ。
真っ直ぐに直そうとしてから、私は手を止めた。
いや、雨は降った方が良いよな……。
体育祭は小雨ならば決行されるけれど、本降りの雨ならば中止になる。
思いっきりその小さな頭を下に向けてから、私は何だか軽やかな気持ちで非常階段を後にした。
本校舎の角を曲がろうとすると、その直ぐ先で竹田君が立ち止まっているところが目に入ってきた。
隣にいるのは鈴木君……。
私は慌てて校舎の陰に隠れる。
そう言えば竹田君は、何で階段下になんかてるてる坊主を吊るしたんだろう。
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