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ウチの学校の体育祭は、縦割りのクラス対抗で開催される。
そして応援合戦は、各学年から2人ずつ、計6人の応援団員を中心に行われる。他の生徒は生徒席から動いてはいけないことになっているので、私達は自分の席で動ける範囲でウェーブだとか手振りだとかのちょっとした踊りを踊る。反対に応援団員達は激しいダンスを踊らなければならないので、替え歌を歌うのは私達の役目だ。
会場全体に聞こえるよう大きな声で、みんなで動きもピッタリ揃えて。これは心を一つにしないと、なかなかできるものではない。
そしてもう一つ……。
「せーの」
『1番はー、A組!』
それぞれの競技の結果が出たところで、サビの部分を少しだけ替えて歌うショートバージョンもやる予定だ。
この時はオケが流れないので、団員達の「せーの」というかけ声だけが頼り。
何パターンか練習したあと、今日もまた有志だけ残って練習するらしい。
いつも通りスルッと教室から抜け出して廊下を歩いていると、後ろから足音が追ってくることに気がついた。
「山下さん」
私が振り返ると、竹田君は少し言い難そうに床の上に視線を落とす。
「……もし無理そうだったら、ショートバージョンはやらなくても大丈夫だよ。応援合戦は点数に関係するからお願いしたいけど」
「えっ?」
心臓がトクリと鳴る。
竹田君はいつも沢山の友達に囲まれていて、イヤイヤやっている私のことなんか気付いていないのかと思っていた。
「ごめんね。なかなか嫌だなんて言い出せない雰囲気だよね」
本当に申し訳なさそうにそう言う竹田君に、何だか自分の頬がほんのりと熱を帯びてゆくような気がした。
「いやいや、全然、大丈夫」
私は赤くなった頬を誤魔化すように、顔の前で手のひらを振ってみせた。
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