16人が本棚に入れています
本棚に追加
てるてる坊主は、毎日一つずつ増えていった。
でも、竹田君は気がつかないのだろうか。吊るしたそれが、次の日には真下を向いてしまっていることに。そして、逆さてるてる坊主はずっと頭を下にしたまま直される様子はない。
竹田君はあんがい大雑把な性格なのかもしれないな……。
いつしか、一つずつ増えるその頭を下に向けるのが、私の密かな楽しみになっていった。
このまま、いつまでも体育祭が始まらなければ良いのに……。
そう思いながら、いつも通り階段の陰に身を潜めていると、本校舎の方から竹田君がやって来る音が聞こえてきた。
そして暫くすると階段下からはゴソゴソとてるてる坊主を括りつける音。
私がワクワクしながら下の様子を窺っていると、呟くような竹田君の声が耳に入ってきた。
「……雨よ降れ」
えっ!
階段下から聞こえてきたセリフに、思わず声を出してしまいそうになって私は慌てて口元を抑えた。
どういうことだろう。
雨が降ったら、体育祭は中止になってしまう。竹田君はあんなに一生懸命に練習していたのに……。
足音が遠ざかっていくと、私は急いで階段下に回り込んだ。
ティッシュで作られたてるてる坊主がいくつも頭を下にしてぶら下がっている。
竹田君が逆さてるてる坊主を元どおりに直さなかったのは、わざとだったのだろうか。
でも、竹田君はどうして雨を願ったりなんかするんだろう……。
最初のコメントを投稿しよう!