20人が本棚に入れています
本棚に追加
雨が降るたび
どうしたのよ、ウスイ。
そんなに泣きそうな顔をしないで。
「俺も……しずくのことが好きだ」
嬉しい。
わたくし、ずっと貴方のことを覚えているわ。
何度生まれ変わっても
貴方のことを愛し続ける。
だからあなたも
「雨が降るたび、わたくしを
思い出して悲しんでくれる?」
わたくしはウスイの頬を撫でる。
「しずくっ!触るな!」
「あなたに触れられるなら死んでも構わないわ」
心臓がドクンと大きな音を立てた。
息が苦しくなる。
ウスイの顔がぼやけていく。
「あぁ、雨が降るたびお前のことを……思い出す」
ウスイの涙がわたくしの頰に落ちた。
その答えが聞けてとても嬉しい。
さよなら、愛しい人。
わたくしは涙を流し、瞳を閉じた。
◯◯◯
俺は、雨が降るたび、しずくのことを思い出す。
しずくは死んだ。
治療を施そうとしたが、もう遅かった。
しずくの心臓は音を鳴らさなくなっていた。
俺がしずくを守れていたら
こんなことにはならなかったはずなのに……。
俺は、全ての元凶である
早川を殺して、結界を解いた。
早川、俺はお前を許さない。
光里は意識を失っていたが脈はあったので
地上まで届けた。
雨は止み、太陽が顔を覗かせていた。
呪いが解けたのだ。
そして光里の怪我は完治したらしい。
しずくが死んだと聞いて悲しんでいたが
「あんまり泣いてはしずくが悲しむ」
と言うと、いつまでも悲しんでいられないと
涙を目に浮かべながら口元に笑みを浮かべた。
夫と抱き合うのを見届けて俺は神界へと戻り
雨を体で感じる。
雨よ、もっと降ってくれ。
雨が降るたび、俺はしずくのことを
鮮明に思い出せるから。
好きだった。
お前の前世で俺としずくは会っていた。
俺の初恋だった。
前世では、神と人であるがゆえに結ばれず
今世でも結ばれぬとは皮肉なことだ。
来世では、お前と結ばれることを願おう。
そして俺は永い眠りについた。
〈終わり〉
最初のコメントを投稿しよう!