雨が降るたび

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雨が降るたび

どうしたのよ、ウスイ。 そんなに泣きそうな顔をしないで。 「俺も……しずくのことが好きだ」 嬉しい。 わたくし、ずっと貴方のことを覚えているわ。 何度生まれ変わっても 貴方のことを愛し続ける。 だからあなたも 「雨が降るたび、わたくしを 思い出して悲しんでくれる?」 わたくしはウスイの頬を撫でる。 「しずくっ!触るな!」 「あなたに触れられるなら死んでも構わないわ」 心臓がドクンと大きな音を立てた。 息が苦しくなる。 ウスイの顔がぼやけていく。 「あぁ、雨が降るたびお前のことを……思い出す」 ウスイの涙がわたくしの頰に落ちた。 その答えが聞けてとても嬉しい。 さよなら、愛しい人。 わたくしは涙を流し、瞳を閉じた。           ◯◯◯ 俺は、雨が降るたび、しずくのことを思い出す。 しずくは死んだ。 治療を施そうとしたが、もう遅かった。 しずくの心臓は音を鳴らさなくなっていた。 俺がしずくを守れていたら こんなことにはならなかったはずなのに……。 俺は、全ての元凶である 早川を殺して、結界を解いた。 早川、俺はお前を許さない。 光里は意識を失っていたが脈はあったので 地上まで届けた。 雨は止み、太陽が顔を覗かせていた。 呪いが解けたのだ。 そして光里の怪我は完治したらしい。 しずくが死んだと聞いて悲しんでいたが 「あんまり泣いてはしずくが悲しむ」 と言うと、いつまでも悲しんでいられないと 涙を目に浮かべながら口元に笑みを浮かべた。 夫と抱き合うのを見届けて俺は神界へと戻り 雨を体で感じる。 雨よ、もっと降ってくれ。 雨が降るたび、俺はしずくのことを 鮮明に思い出せるから。 好きだった。 お前の前世で俺としずくは会っていた。 俺の初恋だった。 前世では、神と人であるがゆえに結ばれず 今世でも結ばれぬとは皮肉なことだ。 来世では、お前と結ばれることを願おう。 そして俺は永い眠りについた。 〈終わり〉
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