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「ここは東京ですよ」
「東京……もう一つ良いですか?」
彼女は知っている東京とは違う景色に戸惑いながらも尋ねる。
「良いですよ」
「今、何年ですか?」
「何年とは? 昭和33年ですよ。あの、もしかして記憶……ありますか?」
彼は心配そうに聞いてくる。
……え? ちょっと待って。今2018年、平成30年じゃないの? 昭和33年っていつ? お母さんも産まれてないよね? 私、美術室にいたはず……。
彼女はパニックになりながらも彼を見つめる。
「……大丈夫ですか?」返事をしていないため、もう一度聞かれてしまった彼女は、反射的に答える。
「あ、はい! 大丈夫……です。実は、あなたの言うように記憶がありません……」
何とかそう言った方が良いと思いそれだけ答えると、彼はますます心配そうになる。
「病院へ行きますか?それとも警察?」
病院や警察が嫌と言う訳ではないけれど、この時代の人間ではないため、行きたくない。
「いえ、記憶は曖昧ですけど、大丈夫です」
何とか笑いながら答えるものの、引きつってしまう。彼は彼女をじっと見つめると、少し考えるように視線をはずし下を見る。
「……良かったら、家うちへ来ますか?」
「え?」
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