母とのこと1

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「そろそろ帰りますか?」と治弥が声をかける。 「そうですね」と言いながら菜美子は立ち上がる。 「2人共帰るのか?」 「うん、菜美子さんもいるし、早めに帰るよ」 「そうか。またな、治弥と菜美子さん」 「うん、またね」 「はい、また。さようなら」  菜美子と治弥は夕日を背にしながら、帰って行った。  家へ着くと利弥も帰って来ていた。菜美子達を見ると、歪んだ笑顔を向けた。 「治弥。この時間まで絵を描いていたのか?」 「はい」 「菜美子ちゃんも?」 「はい」 「ふぅん。治弥さぁ、いつまで絵を続けるんだ?」 「いつまでって。ずっと続けますよ」 「甘いな、お前は」  利弥はため息混じりに言う。 「誰もが父さんみたいになれる訳じゃないんだよ」 「知ってますよ」  2人のやり取りを前に菜美子は、自分のことを思い出していた。進路を母親と話した時のことを。  
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