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「そろそろ帰りますか?」と治弥が声をかける。
「そうですね」と言いながら菜美子は立ち上がる。
「2人共帰るのか?」
「うん、菜美子さんもいるし、早めに帰るよ」
「そうか。またな、治弥と菜美子さん」
「うん、またね」
「はい、また。さようなら」
菜美子と治弥は夕日を背にしながら、帰って行った。
家へ着くと利弥も帰って来ていた。菜美子達を見ると、歪んだ笑顔を向けた。
「治弥。この時間まで絵を描いていたのか?」
「はい」
「菜美子ちゃんも?」
「はい」
「ふぅん。治弥さぁ、いつまで絵を続けるんだ?」
「いつまでって。ずっと続けますよ」
「甘いな、お前は」
利弥はため息混じりに言う。
「誰もが父さんみたいになれる訳じゃないんだよ」
「知ってますよ」
2人のやり取りを前に菜美子は、自分のことを思い出していた。進路を母親と話した時のことを。
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