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「ゆき子。菜美子の好きにさせてあげたら?」
祖母のハナがドアを開けて入って来た。
「……お母さん。これは私と菜美子の問題です。黙っていて下さい!」
「そう? でも、私の可愛い孫の問題なのだから、私が口をはさんでも良いでしょ?」
祖母は負けない。
「お母さん、女は結婚して家庭に入った方が幸せなんです」
「ゆき子。菜美子には才能があるのよ。ゆき子だって、父親の血を引いてるのだから、もう少し理解したって良いじゃないの。ゆき子、利治さんの絵見たことある?」
「いいえ!」
ゆき子は不機嫌そうに返事をする。
「そう……。それは素晴らしい絵を描いていたわ。当時は美術界で知らない人がいない位だったのよ。私も、利治さんに憧れていたわ。お義父さんには会えなかったけれど。とにかく、菜美ちゃんには才能があるのよ。分かるのよ、私。お義父さんと何か似たものを感じるの」
ゆき子は再び大きなため息をつく。
「全く……。お母さんが入るといつもこれだから……。菜美子、私の気持ちは変わりませんからね!」
ゆき子は、そう言うと出て行った。
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