治弥の優しさ

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治弥の優しさ

 目の前に意識を戻すと、2人はまだ話していた。 「治弥はそう言うけど、結局お絵かきしているようなものだろ?」 ――え? 何その言い方!  菜美子は利弥の言い方にショックを受ける。 「兄さん。絵を否定することは、父さんのことも否定することになるんですよ」 「俺は、そんなことは思ってねぇよ」 「今言ったじゃないですか」  その時、玄関の扉が開く。 「ただいま〜……って、何してるの? 3人そろって」  みちが買い物から帰ってきた。 ――良かった。この空気、どうしようかと思ってた。  菜美子はほっと胸を撫で下ろす。 「いえ、別に」 「そう? 菜美子さん、お魚は好きかしら?」 「はい、好きです!」 「そう? 良かった。今晩は冷えるから、魚を使ったお鍋にしましょう。さぁ、皆入りましょう。菜美子さん、手伝ってもらえるかしら?」 「はい。もちろんです」  菜美子はみちの後に続いて台所へ向かった。
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