恋の予感

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 小鳥達は翼を広げ、羽ばたいて行ってしまう。 「飛んで行っちゃったな……」 「はい」  菜美子は少し口先を尖らせる。すると隣からクスッと聞こえる。 「え?」 「ごめん。笑うつもりなかったんだけど、可愛くてさ」 「あ、さっきの小鳥達ですね?」 「違うよ。菜美子さんがだよ」と信治は笑う。 「え?」  菜美子は思わずドキッとする。 「え? いや、俺、何言ってんだ? ごめん、忘れて」と信治は耳を赤くしている。 「信治さん」 「ん?」 「私、信治さんと仲良くなりたいので、時々こうして一緒に絵を描いても、良いですか?」  菜美子も負けずに頬を赤く染めながら言う。 ――何か、恥ずかしい! 「もちろん!」  菜美子がかすかに感じていた、この胸のときめきは、これから始まる信治との恋の予感だったのかもしれない……。  家へ帰ると利弥が玄関へ顔を出す。 「あ、おかえり。菜美子ちゃん」 「……ただいま帰りました」
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