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「家は自慢ではありませんが、結構広くて部屋も沢山あります。……気のせいかもしれませんが、訳ありではないですか?行くあてはありますか?」
「確かに訳ありです。帰る場所も今はないので……。もし、あなたのお言葉に甘えても良いのなら、よろしくお願いします」
「分かりました。父も母もきっと許してくれるはずです。ただ、記憶がないと言うのはまずい気がするので、他の理由を考えましょう」
「他の理由ですか?」
「はい。例えばですけど……父の弟子になりたいとか」
「失礼ですけど、お父さんってどなたですか?」
「あ、失礼しました。父は画家で崎本利治と言います。そこそこ有名ですよ」
「えぇ! あの、崎本利治さんがお父さんなんですか?!」
彼女は驚きの余り大声を出してしまう。通り過ぎる人がちらりとこちらに視線を向る。
彼もまた、彼女のリアクションに少し驚いたように見えるものの、話を続けた。
「はい、そうです。知っていると言うことは、あなたも絵が好きなんですか?」
「はい! 高校を出たら美術大学へ行こうと思っています!」
「……へぇ。そうなんですね。それなら尚更丁度良い。先程の例え話を現実にしましょう」
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