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「何か、固くない?」と言いながら近付いて来る。
「いえ、そんなことありません!」
思わずのけぞってしまうその時、丁度治弥が現れた。
「兄さん。……って、何してるんですか?」
治弥が駆け寄ってくる。
「何って、菜美子ちゃんと話を……」
治弥は近すぎる利弥を菜美子から引き離すようにしながら、いつもの笑顔を菜美子に向ける。
「菜美子さん、今母さんが探していた所です。顔を見せに行って上げて下さい」
「はい」
――助けてくれた? と思いつつ菜美子はお言葉に甘えさせてもらい、玄関を上がって行った。
「ちょっと、菜美子ちゃん……」
菜美子は利弥の呼びかけを無視して行く。
「兄さん!」
追いかけようとする利弥を治弥が引き止める。
「何だよ……」
「菜美子さんは、父さんの弟子なんですよ。手を出したら駄目ですよ」
「良いだろ、別に」
「良くないです。菜美子さんは、まだ16歳なんですよ。僕が、兄さんから守ります」
「へぇ……」
利弥はニヤニヤしている。
「何ですか?」
「お前さ、菜美子ちゃんのこと、好きなの?」
「え? ……ちっ、違いますよ。菜美子さんは父さんの大事な弟子で、可愛いですけど、妹みたいなものです」
「ふぅん……。赤くなりながら言われても、全然説得力ないけどな……」
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