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治弥の想い
数日後、利治と絵の勉強を終えた菜美子は、1人土手へ来ていた。
――信治さん、いるかな?
菜美子は心なしかソワソワしながら、信治を探す。
――今日はいないのかな?
それらしい姿はなく、菜美子はがっかりする。
――しょうがない。この間の続きを描こう。
集中して描いているとふいに名前を呼ばれる。
「菜美子さん」
気付くと隣に信治さんがいた。
「え? いつからいたんですか?!」
菜美子の驚き様に信治は笑う。
「ごめん、ごめん。ついさっきだよ。かなり集中していたみたいだから……」
「そうなんですか? 私こそ驚きすぎてすみません」
「いや。大丈夫だよ」
少しの沈黙の後、信治が菜美子に声をかける。
「あのさ」
「はい?」
「利弥さんのことだけど、同じ家にいて大丈夫?」
「あ……」
「何? 何かあった?」
「いえ。何かって程じゃないですけど、でもやっぱり治弥さんが途中で入って来てくれなかったら、困りました」
「そっか……。俺が側にいられたら守れるのに」
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