鰐

中途半端に優れた頭

　ある日、マルは鰐になった。
　彼の本名はダウビティス・W・マルといって、おそらく世界の大部分を構成しているであろう、自分は特別だ、というある意味強点観念に近い妄想を抱いている人間の1人だ。 彼は公務員で、周りよりちょびっとは仕事ができた。彼は、真面目だったし、それなりに頭も 良かったが、協調性のなさがそれを台無しにしているような人だった。
　先ほど彼のことを、自分は特別だと思っているありふれた人と書いた。無論その通りなの だが、幸か不幸か、彼はその中途半端に優れた頭のせいで、その思想にたびたび、いや、 かなりの頻度で、疑問に思うことがあった。
　そして、それに苦しんでいる。いや、かなり苦しんでいる。
　で、なんでそんな奴が鰐になったのがって?
　それが今から説明する話の内容だ。