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学校からの帰り道、ときどきハラグロさんを見かけるようになった。
商店街の休憩ベンチの下で寝ていたり、和菓子屋の時鐘庵の横の路地を走っていたり――、商店街やその近くをうろうろしている。今まで気付かなかっただけで、ハラグロさんは、けっこうわたしの身近にいたらしい。
だから、最近は、煮干しを詰めた小さなファスナー付き袋を、必ずランドセルに入れている。いつでもハラグロさんにお礼ができるようにね!
七月の最初の金曜日、一学期最後の委員会活動があった。
一学期の反省をして、夏休みの当番の割り当てを決めた。リナタンから、八月のカレンダーを印刷したものが配られて、都合が悪い日には×をつけた。それぞれの予定があるので、学年やクラスに関係なく、来られる日にくればいいということだった。
八月の中頃は、希望者がほとんどいなかったんだけど、快人が引き受けてくれた。クリニックで、旅行に出かける人たちのペットを預かるので、その時期はほとんど家にいるということだった。
快人のお父さんは「通訳」だから、きっと預けられたペットたちが安心するんだろうね。毎年のように預けに来る人もいるんだって――。
委員会が終わって、久しぶりに三人で一緒に帰ることになった。
運動会以来、快人はけっこう人気者になっちゃって、同じクラスの長谷川くんやごっちゃんだけじゃなくて、委員会で一緒の庄原くんやたんたん、福くんたちと帰ることもある。家に帰った後は、ボール公園に集まって、みんなでバスケとかしているらしい。亜香リンの情報に寄ればだけど――。
「うちのクラスにさ、こっそりボール公園に快人たちを見に行ってる女子が、何人かいるんだ。陽菜も、今度見に行ってみない?」
靴箱で、上履きを片付けていたら、亜香リンが変なことを言いだした。
わたしは、思わず快人の姿を探しちゃった。快人は先に靴を履き替えて、もう玄関の外へ出ていた。
バスケをするんじゃなくて、やってる人を見に行くって、何?
わざわざボール公園に行くなら、バスケに入れてもらえばいいのに――。
「行かないよ! バスケ得意じゃないし、だからって見てるだけじゃつまらないし」
「ふうん……。陽菜は、そんな感じなんだ……なるほどね」
亜香リンが、ニヤニヤしながらわたしのことを見た。
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