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「あ、あのさ、ふ、二人って……」
「ああ、陽菜、まだ気づいてなかったんだね? ちゃんと言ってなかったけどさ、快人はわたしのいとこなんだよ!」
「ええっ!? いとこ!? うっそーっ!」
羽生田君は、二年生の二学期に、わたしと亜香リンがいたクラスに転入してきた。
「獣医であるお父さんが外国で勉強することになって、彼が四歳の時に一家で日本を離れた」と、そのとき担任だった吉川先生が言っていた。
お父さんの勉強が終わったので、日本に帰ってきて動物病院を開くことになったんだって――。
羽生田君は、日本語を普通に話していたし、漢字もきちんと書けたし、かけっこも速かった。だから、すぐにクラスになじんで、ずっと前からいたような感じになった。
三年生のクラス替えで、別のクラスになってからは、わたしや亜香リンと関わることは、ほとんどなかったように思っていたんだけど――。
「なんで、今まで教えてくれなかったのよ、亜香リン!」
「ごめん、ごめん! 亘おじさん――快人のお父さんに頼まれてたの。『心配だから亜香里ちゃんのクラスに入れてもらったけど、親戚だってことは内緒にして、快人が自分からみんなに近づいていくのを見守るだけにしてくれ』って――」
あの頃、転入生が来たってだけで、みんな毎日そわそわしていた。
外国から帰ってきた子というのは珍しかったし、すごく特別な感じがしていた。
誰が、一番早く彼の友達になれるか、みんなで競っているようなところもあった。
たしかに、羽生田君が亜香リンのいとことわかってたら、彼のことは亜香リンに任せることにして、すすんで関わろうとする子は、ずっと少なかったかもしれない――。
「この二年の間に、快人の家の病院でペットを診てもらう人も増えて、なんとなーくわたしたちのことも、みんなに知られたように思っていたんだけどな……」
え~っ! もしかして、知らなかったのはわたしだけだったりして?
うちは何もペットを飼っていないから、動物病院なんて行ったことがない。
亜香リンの親友なのに、そんな大事なことも知らなかったなんて、何か複雑な心境……。
ん? もう一つ、気になることを言ってたよね?
わたしが、飼育栽培委員になってくれて良かったとかなんとか――。
その言葉の意味を聞こうとしたら、六年生の集団が教室に入ってきた。
わたしたち以外の五年生も次々とやって来て、内緒話どころじゃなくなった。
しかたない。委員会が終わってから、ゆっくり聞くことにしようっと――。
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