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そして、委員会活動が終わり、下校放送が流れる中――。
同じ方向へ帰る、わたしと亜香リンと羽生田君は、一緒に校門を出た。
わたしは、思い切り不機嫌な顔をして、二人の前を早足で歩いていた。
二人を振り切りたかったけど、わたしより足が速い二人は、普通についてきていた。
委員会活動では、五年生からも副委員長と書記を選ぶことになってるんだけど、希望者がいなかったので、みんなで推せんし合うことにしたんだ。
はじめに、亜香リンがわたしを副委員長に推せんしたら、羽生田君も賛成して、その後は、ほかの子も次々わたしがいいと言いだした。
そして、わたし以外の全員一致で、副委員長に選ばれちゃった――。
一度も同じクラスになったことがない子まで賛成するなんて、おかしくない?
自分でなければ、だれでもいいやってこと? それは、ちょっと腹立つよね!
「ねぇ、陽菜―、まだ怒ってんのー?」
「怒ってるよ! 当たり前じゃん! 二人で組んで、わたしに副委員長押し付けて!」
「押し付けたわけじゃないよー! 本当に陽菜がいいと思ったんだよー! ほらー、快人も説明してよー!」
次の四つ角でわたしは右に曲がるので、なんとか引き留めようと、亜香リンがわたしの腕をつかんできた。
道ばたでけんかするのもはずかしいので、わたしは「鳥吉」の横で立ち止まった。
焼き鳥の香ばしいにおいが、店の中から漂ってきていた。
体の前でぎゅっと腕を組んで、おなかが鳴らないように押さえた。
羽生田君が、亜香リンに肩をつんつんされながら、もそもそと話し始めた。
「あのさ……、僕が転入してきた二年生の頃、矢木沢……さん、飼育係やってたよね? 覚えてる?」
「うん……、覚えてるよ。あのときは、佳奈ちゃんが泣いちゃって、かわいそうだからわたしが代わってあげたの。好きで飼育係をやってたわけじゃないよ」
クラスで飼っていたクサガメの甲太郎の世話が、飼育係の主な仕事だった。
佳奈ちゃんは、じゃんけんで負けて飼育係に決まったのに、「気持ち悪いから、甲太郎に触りたくない」と言って泣き出したのだった。
ザリガニやカエルやカタツムリに比べたら、クサガメなんて全然かわいいのにね!
「でもさ、いつも一生懸命、甲太郎の水そうをそうじしていたよね。ほかの飼育係が、忘れて帰っちゃっても一人でやってた――」
「週に二回は水を替えないと、確かにくさくなることがあるからね。係が世話をさぼったせいで、甲太郎が嫌われたらかわいそうじゃない」
「それだよ、それ!!」
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