1.初めての夜

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1.初めての夜

「…ん、」 口付けの間に漏れる吐息。 頭はぼんやりとしているのに自分とは違う体温と唇に重なる熱は嫌というほど感じるのだから不思議なものだ。 酔っているからか自暴自棄になっているからか。 それとも、 「かわい」 この男の声が優しいからか。 自分からこんな声が漏れるなんて信じたくないのに。 「……ぁ」 唇に、首筋に、頬に、鎖骨に。 形の良い唇が落ちていくのを感じればまた甘い音が口から漏れ出る。 シティーホテルの一室。 部屋に入れば今夜会ったばかりの男は躊躇いなく私を組み敷いた。 ゆっくり唇を落として、ワンピースをたくしあげて、丁寧に太ももをなぞった手はそのうち誰にも触れさせたことのない場所に辿りつく。 「……ぁ、だめ」 「ふふ、なんで?」 反射的に伸ばした手は空を切って。 私を見つめるのは綺麗な瞳。 癖のない栗色の髪に幅の広い二重、まあるい瞳に通った鼻筋、薄い唇。 そこら辺にはそうそう落ちていない極上の男。 そして極め付けにあるのが右目の泣きぼくろ 「……ここ慣らさないと入んないよ?」 「ぇ」 その顔に惚けていたのが悪かった。
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