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第5話 僕へのSOS
僕は、何度も何度も呪いのように家族の愚痴を聞かされた。
お母さんは包丁をすぐに取り出す。
話をふったと思って答えたら、誰も聞いてないし……。
「そんなに包丁を使いたかったなら、いっそ僕を殺してよ」
ってお母さんに言った。
(だって、僕は生まれた時から間違った体で間違った家庭があったから……)
「なんで僕を産んだの?」
って聞いたら、
「そんなに言うなら、殺してやる」
なんて言われて、包丁向けられて、僕はボロ泣き状態だった。
もう、何もわからなかった。
そこに、正しい事なんて何にも無かったし、救いもなかったし、普通の事だってなかった。
なんで、僕が死にたいなんて思ってるのかさえも言えなかった。
そっから、僕もだんだん疲れてきた。
家族を好きでいることが嫌になっちゃったんだ。
好きでいるから苦しいんだって気づいちゃったんだ。
僕は、嫌なことがあったら、未来の自分に手紙を書くようにしていた。
『20歳の自分へ、あなたは幸せですか?』
って最初に書いて、何通も何十通もの誰にも届けられないSOSの手紙を……。
『「死んでしまいたい」
って思う事はおかしな事なのだろうか。
「性別に違和感を覚える」
のはおかしな事だろうか。
「女の人を好きになる」
のはおかしいのだろうか。
「親を殺したい」
そう思うのも、おかしな事なのだろうか。』
助けを込めた沢山の手紙の数々。
僕にとっては、今の自分より昔の自分が不幸である事が支えだった。
SOSの手紙の中にも幸せな手紙もあった。
『20歳の僕も先輩が好きですか』
『僕はとっても先輩が大好きです』
そんな手紙を書いたりしてた。
こんな状況は、5年ぐらい続いた。
家が落ち着いて安定した時期もあったけど、お母さんが居なくなったりした日もあって、家族のせいで僕が大好きだった犬が死んだ日もあった。
その日は、なぜかお母さんが酔ってて、僕が見た中で1番おかしくなってたと思う。
僕は、いつも通り部屋にこもって鍵かけてイヤホンかけて、こもってた。
そしたら、急にドンドンドンドン!ってドアを叩かれて僕はビックリした。
「死んでもいい?」
ってお母さんが僕に聞いてきた。
「死んでもいいって言ってくれ」
「もう、殺してくれ」
って……。
「生きてるいるのは辛いから、あなたは私の子供なんだからお願いを聞いてくれ。殺してくれ」
何度も何度もドアを叩かれて、
(もう、いっそ殺しちゃおうかな)
なんて思った。
(そんなに辛いなら、死ねばいいじゃん。僕だって辛い。僕だって辛いのに生きてんのに……)
「お母さんはお父さんとお兄ちゃんに守ってもらって」
ってそう思うのは当然じゃない?
確かに、お母さんだって辛いと思うよ。
でも、僕だって辛かったんだ。
性別についても、家庭環境についても……。
(辛いのはお母さんだけじゃない。僕の辛い気持ちは無視なの。鬱病だったら何でもかんでも許せるの?)
こんな気持ちなんて、必要ないのに僕の心はずっと叫びたがってる。
「僕だって辛いんだ!」
って……。
(僕はただ人より辛いを耐える感情が強かっただけで、悲しくないわけじゃないのに、どうして僕の気持ちは無視されるのか。ベットから1歩でも動いたら、殺しちゃうのかな)
そんな自分自身ですら怖くて、僕はずっと歌を聴いていた。
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