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第1話 家庭環境
「生まれた時から、僕は普通の人とは全く違う」
そう、思ったのはいつからだろう。
僕の名前は綾瀬千冬。大学3年生だ。僕は、心は男、体は女と性同一性障害という障害を持って生まれてきた。
「気持ち悪い」「間違った体」
自分でも分かっている、周りからの視線がとても怖くて障害を持っているなんて、誰にも話せなかった。
僕のお母さんは、重度の鬱病だった。
僕の家は借金がめちゃくちゃあった。
だから、学校から家に帰る途中に怖いおじさんに
「お母さん、家にいるかな?」
とか、急に知らない人から電話がかかってきた事がしょっちゅうあった。
毎日のように、夜逃げとか僕が幼稚園児の時とかは家賃も払えなくて大家さんとかに追い出されて、よく引っ越してた。
それに加えて、僕にはお兄ちゃんがいる。
お兄ちゃんは僕から見たら、とても酷いやつだ。
勉強が出来なくて、塾とかゲーセンに行ったりしてサボってた。
家の借金もあるし、お兄ちゃんの塾の費用もいるし、そんなこんなでお母さんは鬱病を発症した。
小学1年生の時、お兄ちゃんがお母さんに靴べらとか傘とかで叩かれてるのがとても怖くて何も出来なかった。
お兄ちゃんとお母さんでものすごく言い争ってた。
この時、僕は思ったんだ。
「お兄ちゃんがダメな人間だったからこそ、僕は出来る人間にならなきゃいけなかった」
そういうプレッシャーが小学1年生ながらにして思ってた。
「親に迷惑をかけないいい子でいなきゃ!」
って思って頑張ってた。
でも、どんなに努力して頑張ってても親は認めてくれない。
バカな子ほど可愛いってよく聞くけど、まさにその通りだと思い知らされた。
お母さんは僕よりお兄ちゃんの方が大事だった。
今でも、凄く覚えてることがある。
それは、ある日お母さんが
「貴方とお兄ちゃんが同時に死にそうになったら、私はお兄ちゃんを助けると思う」
と僕に言ってきた。
僕は、
(あぁ、そうだよなぁ〜)
って思った。
お兄ちゃんの方に目がかけられてて、僕はほっとかれてた。
僕にとって、頑張ることとか、人より優れていなきゃいけなことっていうのが、人に迷惑をかけないための方法でしかなかった。
人に愛されるってことがあんまよく分からなくて、でも僕は愛されていたと思う。
僕のお母さんは結構過保護だし、お父さんも優しい人だった。
でも、1番ってのがなかったから、愛されることがイマイチ、ピンと来なかった。
そして、僕の家庭環境はものすごく変わっていった。
お兄ちゃんの受験期が、1番家が荒れる時だった。
僕は
(もう、誰も怒らせないようにしよう。顔色伺おう!)
みたいな、あまりにも怖かった。
けど、僕はお母さんとお兄ちゃんが喧嘩してる中に入って
「2人とも、落ち着いて話そうよ、喧嘩になっちゃうよ」
とか言って、当時の僕が話したら、
お兄ちゃんからは、
「お前は口出してくんな」
って言われて、お母さんからは
「アンタの話は聞いてないのよ!!」
とか言って、凄い怒られた。
(あ、僕に発言権はないんだな)
って思った。
意見を言うことって怖いことで、怒られるって思ってたから、気付けば相談の出来ない子になっていた。
「なんでこんなに言われるの?」
って思った。
(僕の家は他の人の家とは違うのかな?)
僕は、不安や恐怖、虚しさに胸が締め付けられていった。
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