第6話 愛犬の死

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第6話 愛犬の死

そんな時に、僕の家で飼っていた犬が急に吐いた。 名前は、(そら)。 4年も僕たち家族と一緒に暮らしている。 そうは言っても、僕は1人の時、空に会いに来ては話してる。 だって、家ではほとんど誰とも話さないから。 空は吐いてから、体調がおかしかった。 でも、皆、お母さんばっか見てたから、ずっとずっと苦しそうに息してたのにほっとかれてた。 深夜になっても体調が治らないから、お兄ちゃんと一緒に空を病院へ連れて行った。 そしたら、病院の先生に 「今夜が山かもしれません。吐いたものが肺に溜まって息ができなくなっている。体も衰弱しているから耐えられないだろう。もし、今夜を乗り切れば大丈夫かもしれないから、もう遅いから家に帰ってください」 って言われた。 でも、まさか空が死ぬなんて思ってなくて、お兄ちゃんと 「きっと大丈夫だよね……?」 なんて話しながら家に帰ったら、 「犬が死んだ」 って病院から連絡が来た。 帰ってきた空は、冷たくなってた。 お医者さんが言うには、 「飼い主の前で死ぬのは嫌だから、2人が帰ったのを見て安心して死んだんでしょう」 そう言われて、僕は涙が永遠に止まらなかった。 空に何度も僕は謝って、お兄ちゃんはすぐ部屋にこもった。 お父さんはお母さんを見てたから、僕はリビングで1人、空の冷たくなった体を抱えて泣きながら眠りについた。 次の日、火葬場に連れて行かれて、骨になった空が帰ってきた。 お母さんが、 「わんちゃんはどこに行ったの?」 とか言って、頭がおかしくなりそうだった。 僕は、柔らかく空が死んだことを話したら、お母さんが泣きながら空の頭蓋骨を触るから、ビシッって割れそうになっていた。 何もかもが嫌で、僕は (自分がおかしいのかな) なんて思ったりもした。 そう思う嫌な日々と、くらむ違和感と溜まる嫌悪感で吐きそうで吐きそうで、そんな日々を過ごして高校生活に入った。 部活は、中学と一緒の演劇部に入ったけど、全く上手くいかなかった。 高校の演劇部に全国大会っていうのがあって、日本一を決める大会だった。 選ばれた高校は、国立劇場で演劇ができるのだそうだ。 僕は、日本一になりたいって気持ちが人一倍高かった。 『絶対に自分が書いた台本で、自分が考えた演出で絶対に日本一を取ろう!』 目の前のことなんか、未来のことなんか分からないし、正しさなんて何も分からない。 それでも、我武者羅に生きていくしかないだろうって劇を僕は、夢に悩む高校生に向けてその劇をやりたかった。 その劇は、吉田松陰がテーマの劇だった。 吉田松陰の名言で 『諸君、狂いたまえ』 って、いうのがあった。 その意味が、 「常識や古典概念に囚われないで、自分が正しいと思うことを突き通して真っ直ぐ生きていけ」 ってみたいな言葉だった。 それを夢に悩む高校生に伝えたくて、誰かの夢を押せるような、背中を押せるような作品を作ろうと頑張った。 でも、僕が描いた劇は出来ずに終わった。 演劇部には、理不尽な顧問がいた。 僕は、顧問に各台本、各台本、全部顧問に却下された。 挙句の果てに、顧問に 「女の子に男の子の役はできないのよ」 って言われた。 それから、自分の台本を顧問に見せても、理不尽な理由をつけられて却下された。 ストレスで学校に行けない時もあった。 「もう、退部しようかな」 なんて何度も思うことがあった。 やめようか迷っている中、最後の最後で僕なりの台本を顧問に渡した。
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