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第7話 夢に向かって
『変わることも沢山ある中で、変わらないものを大切にしていきたい』
そんな台本を書いた。
この台本には、僕自身のこととかも少しだけ書いてある。
変わっていくことへの不安や周りが成長していくことの焦り、その中で変わらない思い出と変わらないものへの愛しさ、それでも変わろうとする努力する人の尊さ、それを、台本に書こうって思った。
その代わりに、僕は
「部活に残ります」
と顧問に話をした。
そしたら、
「賢い選択をしましたね」
って言われて、悔しかった。
でも、僕にとっては最後の劇であり、最後の機会だった。
だから、必死に頑張っていた。
けど、急に途中で全て崩れた。
僕の考えた話とかが一気になくなって、顧問が考えた内容、顧問が考えた題名、顧問が考えたテーマ、演出になった。
結局、顧問は自分の好きなことを生徒に押し付けるって、何個も何十個も書いた僕の台本は誰の目に見られることなく、伝えたいことは誰にも伝わらず、僕の演劇生活は終わった。
最後の文化祭は、泣きながら登校した。
悔しくて、情けなくて、死にたくて、見て欲しくなくて、友達から託された夢も叶えることも苦しくなって、同学年に勧められて大会が始まる前に、部活を辞めた。
主役だったのに、部長だったのに、先輩から託されたのに、何も次に繋げることができなかった。
大会当日、結果は大失敗だった。
ツギハギだらけの内容に、意味不明な劇、審査も散々だった。
そこで、顧問が僕の同学年に
「来年がありますからね」
ってこぼした。
「……っ、来年なんて無いですよ。僕たちに次なんてないですよ。」
僕は、小さい声でボソッとそう言った。
地獄耳だったのか、顧問に僕の声が聞こえていた。
「次なんて君には無くても、後輩とかが繋いでくれるから」
気軽にそんな事を言っていた顧問に僕は、とうとう自分のストレスをぶつけた。
「何を言ってるんですか。僕は本当は、自分の台本で夢に悩む高校生たちに向けての劇で演出で日本一を取りたかったんです。そのはずだったんですよ。でも、一気に僕の台本はなくなって、あなたの意味不明な台本になったんですよ。僕のこの気持ち分かりますか?」
って聞いたら、
「私はあなたの気持ちなんて分からない。自分の台本がどうとか言ってるけど、日本一はそんな簡単に取れるわけじゃない」
そう顧問に返された。
だから、僕はどうせ卒業するんだと思ったので、
「日本一はそんな簡単に取れるわけない?どうして、諦めてるんですか?そもそも、顧問の台本は誰が見ても酷い出来だと思います。劇は、台本から成り立ってて、その次に演出が1番大事なんです。僕の台本は、誰かに届けたいって気持ちで書いてるんです。一生懸命演出している人にとても失礼です」
僕は、思いのままに顧問に伝えた。
僕が言い終わったあと、顧問が何か言いたそうにしていたが、顧問を置いて僕は、家に帰った。
(今だけ、今だけだったのに、他人からしたら沢山ある中の過ぎ去る中の1……)
僕はそのたった1でしかなくて、僕には今しか無かったのに……。
そんなことを思い知らされながら、僕の学生生活は終わりを告げた。
時間が経てば、
「いつか笑って話せる時が来る」
「いい経験だって言える日が来る」
とか顧問や色んな大人に話された。
「そんなの、成功した人間だけが言える言葉だし、失敗は失敗」
だってそうじゃん。
「僕が作ったものは、全て無意味で、僕の声は誰にも届かない」
そう思った学生生活だった。
そして、僕は高校を卒業した。
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