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第8話 性同一性障害
それから、僕は自分自身について考える心の余裕が出来た。
ずっと悩んでいた性別について、
「前に進もう」
「新しい人生を始めよう」
自分の気持ちを素直に受け入れようと思った。
まあ、環境はさまざまだった。
僕自身を受け入れてくれる人もいれば、僕から離れていく人もいた。
「性同一性障害とか嘘だろ!」
「気持ち悪いんだよ!障害者!」
とか、暴言を吐いてくる人ももちろんいた。
それでも、頑張ろうって、僕は誓った。
「僕を認めてくれる人の為に、誰かを幸せにするために頑張ろう」
そう思った夏だった。
ちなみに僕は、性同一性障害を親に話すつもりは一切なくて、縁を切ろうと思ってた19歳の2月。
僕は、親に内緒で胸オペっていう胸を摘出する手術をしようと決めていた。
なんで親に内緒にしようと思ったのは、絶対やめろと言われるからだ。
寄進バイトして、何十万の手術代を19歳みバラで払った。
未成年の手術は親の許可が必要だったけど、僕は
「どうしようかな、自分で書いちゃおうかな」
なんて、考えつつ2月に向けて過ごしていたら……
僕の部屋に置いてあった、性同一性障害の診断書、手術の内容、その他諸々……親に見つかって、大変な騒動になった。
案の定、僕のお母さんはおかしくなった。
「勘違いだと言ってくれ」
と何度も何度も泣きつかれてきた。
でも僕の気持ちは変わることはなかった。
「このまま生きてたら、僕は生まれてきた事を後悔しちゃうから、どうせ、生まれてきたんなら真っ直ぐ前を向いて生きていきたい。だから、そのために手術が必要なんだ。孫を抱っこさせてあげることは出来ないんだよ。普通の娘でいられなくてごめんなさい」
って、そう謝ったら、お母さんは泣き崩れた。
「娘でいて欲しい」
「普通に生きて欲しい」
「手術をしないで欲しい」
「まだ、19年しか生きていないんだから、勘違いだったらどうするの?30歳、40歳まで待って欲しい。お母さんの心を待って欲しい」
そう言ってて、
「30歳、40歳まで待って、それでも心が変わらなかったら、もうあきらめるから。手術しないで欲しい」
泣きながら言うお母さんに僕の心はどんどん締め付けられていった。
僕は……
「じゃあ、僕はあと10年もあと20年もこの気持ちでいろって言うの?死にたいっていう気持ちを何年も抱えて生きていかなきゃいけないの?」
(ずっとずっと耐えてきた。家族の事も、性別の事も……。家族のわがままを聞いてきた。まだ、僕は我慢して生きていかなきゃいけないのかな)
僕の心のままに、お母さんに告げたら、
「そうだから耐えて欲しい」
って言われた。
そりぁ、お母さんにとったら、大事な1人娘だと思う。
でも、その娘は普通じゃないんだよ。
好きになるのは、女の子で、子供を産んで孫を見せることは出来ない。
僕自身、鏡で自分の体を見る度に、
「僕って、変なんだ」
「僕は女でも男でもどちらでもないんだ」
なんて、思ったりして、自分がどんどん、嫌いになってく。
だから、自分を好きになるために、胸を張って生きていくために、手術をしようと思った。
何度も何度も手術を反対して、止めようとしたお母さんを差し置いて、僕は手術をしに家を出た。
別に変な目で見られたって気にしない。
僕が自分自身を受け入れれば、僕は僕を好きになれる。
いつか、誰かが僕を受け入れてくれる。
そんな気持ちが僕の背中を押してくれた。
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