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01
まだ在学中であった頃、諸事情により東明家が没落の憂き目に遭った。財産は殆ど消え爵位も返上、父は心労困憊の末に還らぬ人となり。
当然、女学校に通う金子どころか、生活もままならなくなって、満穂は中退して働きに出るつもりだったのだけど、四つ歳の離れた兄――圭祐が、「女子ならば尚更、学校教育はキチンと受けた方が将来の為になる。俺が何とかするから、お前は学問を優先しなさい」と言ってくれた。
圭祐は華族の男爵令息という身分と血筋により、十二歳から学校の先輩の伝手で紹介された侍従職出仕に就き、皇室に勤めていた。侍従職出仕とは、平たく言えば帝や東宮といった尊身の近侍として身の回りのお世話をさせて頂く小姓の事を指す。
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