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 侍従は職務の内容や状況によっては後宮の皇女や女官などと顔を合わせたり話し合ったりする機会も多いが、既婚であればともかく、未婚の女官はいわば皇室男子の側室、或いは側室候補であるのは暗黙の了解だ。仕事の為とは言え過度な接触によって男女の愛が芽生えれば、仕えるお方を裏切る結果となってしまいかねない……。  そんな不祥事を起こさないようにするには、皇女や女官への御用聞きや雑用を必然的に精通を迎えていない少年が請け負うのが一番安心だし安全だ。  もっとも、帝には正妻の皇后が居るし、女官全てに手を付ける訳でもなし、自分の愛人ではない女官が誰と火遊びや恋をしようと、目を瞑ってやるくらいの度量はあるはずだが。そうでなければ既婚の女官は即座にクビになってしまう。  成長期に入って青年に差し掛かる前、身体の成長具合によって十五歳くらいで侍従職出仕は任を解かれるのが通常である。それまでの仕事振りや人格などで好評価を得られていたら、今度は侍従職として再就職の勧誘もある。  圭祐は侍従職出仕を辞めておよそ二年ほどは青春を謳歌し学業に精を出していたが、またお声を掛けられたのを機に、今度は東宮侍従に任命された。名誉な事だ。
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