子供にはあたりまえ

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「まずは拝殿正面の『子育ての虎』です。戦国時代、甲斐武田の「信玄焼き」によって消失したさい、家康によって再興され、家康が「寅の年、寅の日、寅の刻生まれ」ということで、それにちなんで二頭の子虎と戯れる母虎を彫刻したと言われています。母虎だけヒョウ柄なんですよ」  尊が静かに説明する。 「あ、本当だ」  大地が口を開けて『子育ての虎』を見上げて言った。 「子宝、子育て、子孫繫栄として信仰されています。『赤子には肌を離すな、幼児には手を離すな、子供には目を離すな、若者には心を離すな』と言う親の心得が伝えられています。ちょっと難しいですかね」  こちらを見た尊が 「私は親になってはいないので、親が子を思う気持ちは正直わからないのですが、なんとなく心に留めておいて将来、お子さんを授かったときに思い出せばいいと思います」  尊の話に頷いて大地が『子育ての虎』の彫刻を写真に撮っていた。  ゆっくり尊が拝殿を左に回り込む。本殿の左脇に来る。
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