子供にはあたりまえ

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「努力して、最後のひと押しをするのが神様なので、お守りを身に付けているからと言って、なにもしない人にはお力添えいただけないでしょうね」  穏やかな口調で尊が大地を諭した。 「あーあ、やっぱり……」  大地が残念そうに肩を落とす。 「私も勉強は苦手でしたよ。心の底から太宰府天満宮の宮司の息子に生まれなくて良かったと思っていたくらいですから。ほら、学問の神様でしょう。受験に失敗するわけにはいきませんからね。相当なプレッシャーでしょう? それに比べたら、私なんてまだ自由にやらせてもらったほうですよ」 「すっごいプラス思考ですね。尊さんは秩父神社を継ぐんですか」  颯太が尋ねた。 「たぶん、そうなりますね」  尊は穏やかに笑っているが、長い歴史を背負うのもプレッシャーだろう、と颯太は感じた。  大地が『北辰の梟』を写真におさめると、本殿を時計回りに歩いて儀式殿の向かいの、有名な『つなぎの龍』の前に来た。 「ここは秩父神社の裏鬼門です」  尊が『つなぎの龍』の前で立ち止まる。
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