子供にはあたりまえ

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 ベニヤ板から切り出した各パーツごとにやすりをかけて、再度、秩父神社の細部と比較するために、大地とまた写真を撮りに行く。尊に電話したが「今日は忙しい」とのことだった。  お盆前の週末は、秩父神社を訪れる観光バスツアー客で、お祭りの日みたいだった。  授与所付近から拝殿を撮っていたが、御朱印を求める人の列の邪魔にならないように気を配った。  長らく待たされている列の後方で聞こえよがしに「まだぁ?」「おっせぇよ」と騒ぎ立てはじめた。巫女が「三十分まちです」と知らせに走っていた。 「本当に三十分なの? バスの迎えの時間がきちゃうじゃない。もっと早くならないの?」  待ちきれないのか巫女に詰め寄っている。  大地が苛ついた声で「なに、あれ。御朱印ブーム滅びろ」物騒なことを言い出す。 「せっかく神社に来たのに、あんな行動するって、残念」  颯太が言うと、大地が思い出す視線になり 「うちの親父が子供の頃、カードゲームが流行ったらしくてさ、御朱印もレアカードをコンプリートする感覚で集めているんじゃない? だいたいその世代」  そう言って列に並んでる大人たちを見て 「心構えが何か違うよね」
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