子供にはあたりまえ

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「冷蔵庫の麦茶、勝手に飲んでいいから」  大地にコップを手渡す。 「そう言えば、颯太の両親は? 休みじゃねぇの?」 「旅行に行ってる。ぼくは行きたくないから留守番」 「ほー。何で行きたくないの?」 「電車とか飛行機とか閉じ込められたところに行くと飛び降りたくなるから」 「えっ? ……ちょっと意味が分からない」 「自動車でも高速で渋滞になったら飛出したくなる」 「どうして?」 「どうしても。そうめんできたよ。テーブル片付けてくれた?」 「あっ」 「あ、じゃないよ。しょうがないな」  颯太はテーブルに広がる着色済のベニヤ板のパーツをプラケースに移して、テーブルの真ん中にスペースを作り、ざるに盛ったそうめんと、めんつゆを入れた茶わんを置く。  テーブルを挟んで大地と向かい合い、そうめんをすすった。  大地の食欲が旺盛で、颯太が食べる速度の倍のペースでそうめんを平らげた。  シンクにざると茶わん、鍋を水に浸して後で洗うことにした。  少しだけ食休みをして、尊に電話してから、秩父神社へ向かう。時計は午後一時をさしていた。 「今日はどうしました?」  授与所から尊が出てくる。
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