子供にはあたりまえ

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「天神地祇社の写真を撮り忘れていたんです」  大地が告げると、快く尊が案内してくれた。 神門を通り石畳を踏んで秩父神社の奥の授与所の横を通り過ぎて、左手の虎の門を過ぎ、つなぎの龍のさらに奥、東門の後ろに天神地祇社がある。末社の中央に行き紙垂がある正面で二拝二拍手一拝して賽銭を落として挨拶をすると、大地がスマホを構え写真を撮る。左奥からも写真を撮る。 「天神地祇社に鎮座するのは全国の一之宮を中心に計七十五座の神々です。ご祭神であるヤゴコロオモイカネノミコトは多くの神々の意見を聞き、折々の聖断を下される神様として語られることなどの逸話から、お祀りされたと伝えられています」  尊の話を聞いて扉の閉まった天神地祇社を数えてあるいていると、なにやら騒がしい声がした。  つなぎの龍の彫刻の手前にきたとき、颯太と同じ歳くらいの男の子を囲むように、数人の女性たちが、つなぎの龍を見ながら話している声が聞こえてきた。 「ケイタ、何かメッセージが聞こえる?」  ケイタと呼ばれた男の子に尋ねたのは、たぶんケイタの母だろう。
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