子供にはあたりまえ

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「うん、龍が言うには『あなたたちを歓迎する。よくぞ来てくれた。待っていた』って言ってるよ」  ケイタが答えたが、颯太は、つなぎの龍はそんなことは言わないだろう、と大地と顔を見合わせた。  続けてケイタが一人の女性にいった。 「ミドリさんは神武天皇時代のサイオウの生まれ変わりだから、この龍を貸してあげる、って言ってる」  颯太と大地を驚かせた。 「何の縁もゆかりもないやつに、龍を貸すわけがない!」  思わず颯太が口走ると、隣で大地が怒り始めたのがわかった。  大地はスマホに「オッケー、グーグル。サイオウって何?」と、検索していた。 斎王↓ 伊勢神宮に奉仕した未婚の内親王、女王。 「ふーん」  検索結果に不満がある大地の怒りと、目の前のミドリのテンションの上がり方が対照的だ。ミドリはどう見ても高い位や高い徳を積んでいるようには見えないし、なんなら雰囲気からして俗っぽかった。  颯太は試すようにケイタの脳に直接、声をかけた。 『いい加減なこと言うな! 龍はそんなメッセージは言わないし貸し出しもしない。ありもしないメッセージを捏造するなよ』  ケイタの表情が固まった。
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