子供にはあたりまえ

21/85
前へ
/85ページ
次へ
 風は止みじっとりとした熱気が体に絡みつく。境内には人がいるはずなのに、ケイタを取り囲んだ大人たちの思い上がりを増長させるメッセージ以外の音が消える。薄気味悪いくらいの静けさに、颯太は吐き気がした。  ケイタの母が、ケイタを利用してメッセージを降ろして、いったい、いくつの神社でこんなことをしたのだろう。  ケイタのメッセージを聞くために集まった大人から、お金も動いているのだろう。 ケイタの母が、もしも視えたり聞こえたりする人ならば、今、ここの吐き気がする空気と静けさに気がづけただろう。  まるで何者か得体の知れないものが、ケイタの言葉を漏らさず聞くための静けさのように、颯太は感じて、怖くなった。  ケイタも気づいているだろうか。それとも、こんなことをして恐れが麻痺しているのか。  ケイタの母にお金が入るかどうかは、どうでもいいし、どうなろうと知ったことではないが、ケイタには一言、言っておきたくて颯太は『もうやめたほうがいい』と忠告した。  ケイタに伝わったのか、と颯太が目線を向けたときだった。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加