子供にはあたりまえ

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 周囲の景色の色がなくなり、真昼なのに薄暗くなっていく。  玉砂利の音もたてず、巫女がグラスを四つ乗せたお盆をもって近づいてきた。  ケイタの母にオレンジジュースを、ケイタにはコーラを、颯太と大地には麦茶を手渡してきた。巫女はケイタに向かって低い声で言った。 『お主の言葉通り歓迎しに来てやったぞ。さぁ、飲め』  巫女の雰囲気が威圧感に満ちる。すぅ、とケイタの母に目線を移した。気圧されたようにケイタの母が、グラスに口をつけ飲み干す。  ゆっくりとケイタの母の色がなくなっていき、薄暗いあたりの景色に同化した。  まだ色があるのは、ケイタ、大地、颯太と巫女だけで、その他の大人は色のない世界にはじき出されていた。  大地が不安げに 「これ、飲むと俺たち、どうなるんだ」  と呟く。  すると巫女は 『怖れることはない。こちらの境界線と知らずに触れたお主らの半分を置いていってもらうだけだ。それも人として生きるには問題ない程度よ。お主ら、戻りたければ、それを飲め。禁忌を犯した者どもは、今、蚊帳の外だ。こちらに近づき過ぎたお主らが戻るには必要なこと。外の世界では瞬きする間の出来事よ』 「半分、って何を置いてくんだ」  颯太は訊ねる。
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