子供にはあたりまえ

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『人の世に不要なものを置いていってもらうだけのこと』  表情がないまま巫女が告げた。  大地と颯太はケイタと目を合わせ、どうしても飲まなければここから解放さらないと悟り、グラスの中身をグッと飲んだ。  颯太の喉を麦茶が通り過ぎ体内に入った瞬間、眩暈を感じた。ぐにゃりと視界が歪み、奈落の底へ落ちていくような引力で、意識が何か引き込まれる。  暗闇の中にケイタがいた。颯太の隣には大地の存在がいるのがわかり、ほっとする。  トンネルの中だろうか……遥か先に光が見える。  ケイタがトンネルの出口に向かって歩いて行く。その後を颯太は追いかけた。大地も颯太についてくる。  トンネルを抜けると光が眩しくて目を開けていられない。  しばらくすると光の強さに慣れてきて、かたく閉じた瞼をゆっくり開けた。  光は強く輝きながら颯太と大地を包んでいた。  ケイタがいたのは、強い輝きの向こう側、鬱蒼とした森の手前だった。      ※ ※ ※ ※ ※ 『人の世事は人が成すもの……』  ケイタの目の前の森から、さっきの巫女の声が聞こえてきた。
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