子供にはあたりまえ

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「ああ、これ詳しい寸法がわからないから、縮尺を作るのは難しくないか? 建物の略図も欲しいし」  大地が指摘する。 「市立図書館に資料があるんじゃないかな。ノープランで始めるから、すぐこうなる」  颯太は順番が逆だったことに気がつく。まず資料を調べてから写真だよな。 「そうだな、明日は図書館へ行こう」  大地はそう言って麦茶をぐびぐび飲み干した。 「めんどくせぇ」 「本当にな」  颯太も、まだ出発点にも届いていない自由研究の完成までの道のりを思って気が遠くなった。  雷雨は小一時間ほどで止み、明日の約束をして大地は帰っていった。  翌日、午前十時に大地が自転車で颯太を迎えに来て、二人で図書館へ向かった。  図書館は冷房がよく効いていて、ひんやりした空気で汗ばんだ肌を急激に冷やしていった。  受付で「郷土資料室を使用したいんです」と告げると、司書が案内してくれた。円形の建物の中央は吹抜けになっていて、階段をぐるりとあがっていくと、二階の一室のドアを開けてくれた。  古い書籍の匂いが鼻を刺激した。
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