子供にはあたりまえ

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「どう、したいかなんて考えたこともなかった」 「言い方を変えよう。例え神様だって君のやりたいことを強制できない。決めるのは、いつだって自分が判断しなければならない。君がもし『でもお母さんが喜ぶからやってる』って言うなら、それも君の判断だろう? 今はいいけど母親に無理強いさせられて君が自分のやりたいことを封じ、母親の業欲にに合わせていたとしたら、それは将来、君の中で恨みと憎しみに変わるよ」  一息にまくし立てた猿面は舞台で飛び上がり 「思い出せないなら見せてやろう」  と宙返りする。  猿面は舞台の奥にさがり、舞台を照らしている蠟燭が揺れた。  猿面と入れ替わり、翁面が舞台の前方に立っていた。  くるりと翁面がケイタに背を向ける。  翁面の目線の先には、猿面の赤ちゃんを抱いた女面とその横に立つ男面が幸せそうに笑っていた。 「こちらを見てください、撮りますよ」  と翁面が手を挙げて、三脚カメラで一家を写した。フラシュがたかれて、その光が場面を変えた。  次は椅子に座った女面が、膝に猿面の幼児を乗せ、男面がその後ろに立っている姿を、翁面がまた三脚カメラで写した。
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